写真を撮っているとき、施設の方から何らかの注意や指摘をされた経験はありませんか?(例えば、三脚禁止の場所で間違って三脚を使ってしまったなど)もしくは、自分が撮影してWebサイトにアップロードした写真が無断で転載されていたという苦い経験をお持ちの方も少なくないはず。今回は写真を撮るという行為と撮影した写真の権利関係について解説したいと思います。少し専門的な話になりますが、撮影ジャンルやプロ・アマ問わず知っておきたい知識となりますので、ぜひ最後までお読み下さい。
夜景撮影は山や丘の高台、公園、ビルの展望室など様々な場所で楽しめるのが魅力。ただし、撮影時に気をつけないといけないのが、 私有地や施設管理者がいる場所での撮影。公道などでは基本的に場所を占有しない限り自由に撮影できると解されていますが、私有地などは施設管理者の定めたルールに従う必要があります。これを「施設管理権」と言い、民法206条の所有権が根拠になっているようです。
一般的にビルの展望室などでは三脚や暗幕を禁止されているケースが目立ちますが、施設管理者は基本的人権に接触しない限り、自由にルールを決めることができるようです。
ご存じの通り、自身が撮影した写真には一定の要件を満たせば”著作物”として認められます。著作物には”著作権”という権利が生じますが、 どのような写真でも著作権が生じるとは言えないようです。下記の条文によると「思想又は感情を創作的に表現」できているかが要件になり、絵画を撮った写真や機械で撮影した証明写真・プリクラなどは著作物とは認められず、構図やカメラの設定などで創意工夫をする必要があります。
著作権が認められるには手続などは必要無く、著作性のある写真を撮った段階で自然発生的に権利が認められます。ただ、インターネットに写真を公開し、無断で転載されるケースが後を絶ちませんが、写真にコピーライトを入れるなど自身が撮影した写真を特定できるようにしておくと予防効果も高まります。
ここまで場所の権利と写真の権利について触れてきましたが、最後に被写体の権利を忘れてはいけません。 被写体の権利と言えば真っ先に浮かぶのが”肖像権”。撮影時には人物のプライバシーに配慮するのは当然のことですが、 人物以外にも気をつける必要がありそうです。
夜景スポットで人物を撮る時、肖像権を意識する必要があります。肖像権とは自身の姿を承諾無しに他者に使用されない権利で、プライバシー権の一種でもあります。個人を特定できない形(シルエットや後ろ姿など)は問題になるケースが少ないですが、個人を特定できるように顔がはっきり写っているような場合は注意が必要です。
例えば、屋外に設置されている著作物である美術品(彫刻・銅像など)や建物を撮影することは著作権の侵害になるのでしょうか?
(公開の美術の著作物等の利用) 第四十六条 美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。一 彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合 二 建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合 三 前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合 四 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合 |
建物自体には肖像権は認められておらず(人物のみ)、肖像権は行使できませんが、著作権を持つ建造物は存在します。 ただ、一般的に建造物を撮影して公開しても問題になるケースは無いようですが、著作権を持つ建造物の写真を元に絵はがきやポスターを作り、販売すると著作権に接触する可能性が高いです。
改正された著作権法の第三十条の二(付随対象著作物の利用)で、一定の条件下で写り込みが認められるようになりました。これまでは写真に建造物などの著作物が写り込んでいた場合は判断に非常に悩まされましたが、著作権法の改正により条件さえ満たしていれば写り込みは問題が無いということになります。
【写り込みが認められる事例】
ここまで場所・写真・被写体の権利について個々に解説しましたが、法改正や判例によって上記の権利関係に関するルールは変更される可能性もありますので、ご注意下さい。最後に上記の権利関係を元に5つの事例を取り上げてみました。
写真を撮るとき、”誰”が”どこ”で”何”を撮るかを意識してみてください。色々と難しい話になってしまいましたが、最低限のマナーさえ守っていれば普段通り撮影していて問題無いかと思います。
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