先日、東京理科大学大学院の知的財産戦略専攻(MIP)にて「著作権法特論」の講義をさせて頂きました。
これまでゲスト講師として同授業に何度かお招き頂き、写真撮影における権利関係や著作権侵害を受けたケースについてお話させて頂きました。私は法律の専門家ではありませんが、クリエイターの立場でこれまでに数多くの著作権侵害(画像の無断転載)に対して開示請求や交渉を行ってきましたので、その経験を授業の場でお伝えできて、知的財産を学ぶ学生さんのお力になれて、大変良い機会となりました。
理科大では3度目の講義となりますが、著作権侵害をされた場合のプロバイダへの発信者情報開示請求の手順や、開示後の損害賠償請求の示談交渉をテーマに挙げています。まずは「プロバイダ責任制限法」の内容を知ることが重要ですが、関連法規についても軽く触れています。
一般的にフォトグラファーやイラストレーターなどのクリエイターは、直接サイト運営者に連絡することはあっても、プロバイダ責任制限法による開示請求をするケースは非常に限られていると思います。なぜなら、手続がわかりづらく、敷居が高いからです。そこでまずは、プロバイダを通じた開示請求がどのような流れで行われるか、図を用いて解説しました。基本的にはプロバイダ宛に開示請求書を郵送した後、プロバイダは発信者に対して意見照会を行います。発信者(加害者)は意見照会の段階で開示請求を拒否するケースが多いのですが、あくまでプロバイダは参考に意見を聞くだけなので、発信者が開示を拒否してもプロバイダが権利侵害があると判断して、開示に踏み切るケースも多々見られます。
続いて、開示請求書の作成手順を解説します。「プロバイダ責任制限法関連情報Webサイト」に発信者情報開示請求書の見本が掲載されていますが、初めての方には書類の記載方法などを見ても、敷居が高く感じられます。実際に提出する書類は請求書が2枚、身分証のコピー、証拠(転載元と転載先)をプリントして簡易書留かクリックポストなどで郵送するだけで、慣れてしまえばさほど難しくありません。書類を提出して3~4週間後に書面で結果が送られます。
私はレンタルサーバ会社やNaverなどのコンテンツプロバイダを中心に開示請求を行ってきましたが、スムーズに開示できる場合もあれば、プロバイダが権利侵害を認めずに開示を拒否された例もありました。プロバイダが開示を拒否した場合は、裁判所を通じて仮処分や開示請求訴訟を進めていく必要があるそうです。今後はクリエイターでも自分でできる開示請求方法について、詳しく解説したいと思います。